ウェブサイト制作会社と、うまく付き合っていく方法

意外と多い、ウェブ制作・管理絡みの契約トラブル

ホームページ(Homepage)・ウェブサイト(Website)制作や維持・管理を外部の会社に委託されている方、結構いらっしゃるんじゃないかと思います。あなたと制作会社の関係が良好なうちは、まったく気にならないリスクでも、いざ、トラブルが発生すると大きな惨事が待っていたりします。
ここでは、どんなトラブルが発生しても、被害を最小限にするノウハウを備忘録として記します。
※以降、断りがない場合 ホームページ → ウェブサイトと語句を統一して 解説します。

あなたの会社とウェブサイト制作会社との付き合い方の極意

重ねて言いますが、通常、依頼されている制作会社さんとの関係が良好である場合には、ここで記すような予防策はせずとも大丈夫なはずですし、おそらく『良い制作会社』と言われているところではこれらの予防策は、こちらが講じなくても最初から制作会社サイドで提示してくれている内容でもあります。
裏を返して言うと、その会社の企業倫理が宜しくなかった会社、あなたをカモだと思っている制作会社、アナタに他の会社に逃げられたくないと思っている制作会社の場合、ここにある予防策をしておかないと、大変なことになるという意味にもなります。

打っておくべき予防策をお話しする前に

細かな解説に入る前に、固有名詞について解説してゆきましょう。
あなたが、外部の制作会社に発注して、ウェブサイト(Website)などを依頼している場合、下記のような会社が登場します。

あなた・・・ウェブサイトを持ちたいあなたです。個人事業者の場合は責任者、法人の場合は今回の制作外注契約の責任者、というふうに読み替えてください。自分で全てを手配する場合の除いて、代行会社=制作会社などに業務発注をする形を取ることが多いです。この記事では外部に発注した際に生じる事柄をメインにしています。

制作会社・・・ウェブサイトのデザインやプログラミングを行ったり、後述のレンタルサーバや、ドメイン名の申請や管理を代行してくれる場合があります。まれに、制作会社が独自に用意したサーバ上でデータが管理されていることがあります。こういう運用形態の場合は、更に注意が必要となります。

汎用CMS と 独自CMS
この記事では、汎用的なCMSを用いてレンタルサーバ上にCMSのシステムとコンテンツのすべてが存在する環境をイメージして、トラブルなどに端を発したダメージの軽減策を記事にしています。最近の制作会社さんにおかれましては、制作会社内に開発ツールとしてのCMSシステム相当を所有し、コンテンツはそのシステム内で管理し、ウェブサイトを実現するためのCSS/HTML/画像素材などを、契約されているサーバ上に展開して実現しているものがあります。この『独自CMS』のような方法が採用されて制作されたウェブサイトの場合で、この記事にあるようなトラブルが生じますと、コンテンツの管理に相当する部分は継承できない可能性があり、記事の内容と合わないことがありますので多少の読み替えが必要になります。

レンタルサーバ会社・・・あなたのウェブサイトを構成する情報群、CMSシステムを利用したコンテンツ(ウェブサイトを制作・実現する上での素材)の情報を保管する環境 (ネット上の仮想的なサーバPC) をレンタルする会社です。のちのち話題になるログイン名や、FTP情報などが関わってきます。

レジストラ・・・ドメイン名を発行・維持・管理する会社/組織です。独自ドメイン名の申請を受け、維持費を頂く代わりにこのドメイン名を維持・管理してくれます。(例えば pasokon360.com みたいな、申請・登録した人だけが占有して利用できるインターネット上のドメイン名のこと。) 大手レンタルサーバ会社は、このレジストラへの申請・管理・更新機能を有し、サーバのレンタル契約とともにドメイン名の管理もしてくれる場合があります。その場合は、レジストラを意識しなくても良い場合もあります。

ウェブサイト制作を丸投げした場合のお金/契約の流れ

一般的に最も多い契約の方法です。重ねて言いますが関係が良好である限り、この契約方法でまったく問題はありません。これは、契約時アルアルな話ですが、ウェブサイト関連の契約をし始めの頃は、良い会社でも悪い会社でも、あなたとの関係が良好であることは当たり前で、長い年月の中でどのように変化していくか、変化せずそのまま良好か?が重要です。『人当たりが良かったのでそんな悪い会社とは思わなかった~』というのが、良くある被害者の第一声です。
この契約方法だとトラブルが起こった時に、あなた側の被害が甚大になりやすいというだけです。

あなた制作会社
ウェブサイト制作に関して契約を行います。費用面では初回の制作費、サーバやドメインの維持費用、ウェブサイトの更新が発生した場合の費用、この三つが主な費用となります。

制作会社レンタルサーバ会社レジストラ
制作会社は、あなたに代わってサーバ利用の契約と、ドメイン名使用の契約を行います(初回)、以降最長でも一年ごとにサーバの更新費用、ドメイン名使用権利の更新費用を代わって支払います。ここでポイントなのは、サーバやドメインの契約をしているのは、あなたではなく制作会社である場合が多いということです。
ここの契約・権利関係がどうなっているかで、今後のあなたが抱えるリスクの程度が判る、大事な部分になります。

できればこうしておきたい、お金/契約の流れ (理想)

先に理想的な契約についても記しておきます。どうして、この契約方法が良いのか、最後に解説をしてゆきます。
あなた制作会社
ウェブサイトの制作について、基本的な方針について打ち合わせを持ちます。どのような規模のものを、どのくらいの期間・予算で実現するか、レンタルするサーバやドメイン名の契約・管理の方針についてもここで話しをまとめておきます。
ウェブサイトに詳しくなく、どうしても誰かに丸投げして任せたい気持ちは理解できますが、ここはあえて難しい方法でトライしてください。

あなたレンタルサーバ会社レジストラ
サーバとドメイン名の契約は、ぜひあなたの名義で直接行ってください。申し込みの仕方が判らなければ、制作会社 の方にアドバイスを受ける、もしくは契約作業に同席してもらう、でも良いでしょう。

あなた制作会社
ウェブサイト制作に必要な情報 (サーバー情報、ドメイン申請情報) などを制作会社に伝えて作業を行ってもらいます。


これで何が変わるの?
あなた制作会社 との間で何か『トラブル』や『揉め事』が起きたとき、ウェブサイトの更新・維持・管理が停滞します。
そうなった時に、あなた制作会社 を排除して、直接、 これらの会社 (レンタルサーバ会社レジストラ) と 交渉していく必要が生じます。 この時点で、これらの会社との契約があなたにあるか、ないかで、今後の紛争解決の手間隙が大きく変わります。

よくあるトラブルの事例

逃げられた・無くなった系・・・ウェブサイトの更新をお願いしようとしたら・・・
❌ 連絡先のメールも電話も連絡がつかなくなっていた。 ❌ いつの間にか、あなたのウェブサイトが表示されなくなっていた。 ❌ 独自ドメインのメールアドレスでエラーが発生し、送受信できない。 ❌ あなたのウェブサイトにウィルスが混入していると外部から指摘があったが、制作会社と連絡がつかず修正もページを初期化することもできない。

とにかく、緊密に連絡を取らない場合で、契約情報などが制作会社に一任されていた場合、ウェブサイトの権利や、ドメイン名の所有権自体も消失する確率が高く、非常に危険な状況です。この状況で他の制作会社と契約をしても、過去の遺産について継承できないことがほとんどです。(また最初から別なウェブサイトを作ることになります。)
今までと同じドメイン名が利用できなくなる事例が多く、ビジネス的には大きなダメージに発展しがちです。

諸条件が悪くなった・・・契約の中に数回無料で更新してもらえるような話だったが、実際にお願いしてみると聞き慣れない費用を追加請求された。❌ 契約更新の際に、以前とは異なる契約条件を突きつけてきた。実質値上げ。❌ 突発的に謎の費用を契約期間の中で別途請求される。❌ 払わないとウェブサイトが無くなるなど具体的に脅されるケース。❌ 合併などで新しい会社から、別の契約が届くなど、レパートリーも沢山あります。

お金(費用)絡みのトラブルは、その内容によっては、その制作会社と関わった(契約した)時点で既定路線(なるべくしてなってしまった)である場合が多いと感じています。納得いかない費用は、初回で白黒つけるくらいの勢いと覚悟で望んでください。

あなたのウェブサイトを最終的に守る方法

第一優先度は、 あなたが、レンタルサーバとドメイン名の契約者であること。
これで、紛争手続きを踏めば、法律上レンタルサーバや、ドメイン名の所有者であることは死守できます。
紛争発展時において、ドメイン名とウェブサイトのデータを守ること が最重要です。自社のウェブサイトを守る最大の要所は、自社・自店のウェブサイトデータを守ること。
しかし、昨今流行のCMS(WordPressなど)を導入されいてる場合は、このサーバ上にあるデータがどうなっているか?
可能であれば、あなた側でログイン情報などを確認し、正しくログインできるか?紛争中はパスワードを一時的に変更して、自分のみがログインできるようにロックしておくのも有効な手段です。

第二優先度は、レンタルサーバとデータペース上のデータが温存されている、もしくはバックアップデータが存在すること。
制作会社との紛争があり、契約を破棄する場合は、かなりの確率でサーバ上・データベース上のデータを壊される事例があります。壊されないまでも、ログインできず自社のデータを放棄せざるを得ない状況になったという事例もあります。CMSを使ってウェブサイトを構築している場合、データペース情報を守ることも重要です。
データペース情報が破壊されていても、CMSシステム自身は何とか、検索エンジンなどのキャッシュ情報から、見よう見まねで復元できるかもしれませんが、ウェブサイトの枝葉の1ページまで完全に再現させることは難しいです。
制作会社と紛争が起こる前に、定期的にバックアップデータを手元に残す習慣を付けましょう。
制作会社は(特に悪い制作会社は)、今まで丸投げしていたあなたが、急にバックアップデータが欲しいなんて要求すると、『我が社との契約を切る気だ』と勘づく場合が多いので、タイミングも重要となります。
その制作会社から勘づかれずに、他社さんのお世話になりたいという場合は、『事前の引き継ぎ計画を隠密に実行してくれる』制作会社との別契約も視野に入れないといけない場面もあります。もうドラマや映画のような隠密行動が求められますので、初手は慎重に始めてください。

第三優先度は、繰り返しになりますが、サーバとドメインの契約情報はあなたが名義になること、パスワードが改変されていないか定期的に確認すること
制作会社と紛争になる時、これらの紛争に勝つスタート地点は、契約情報とパスワードや連絡先メールアドレスがあなたの管理下にあるかどうか、管理下にできるかどうかで、ある程度決まります。
あなたと制作会社との関係が悪くなってからでは、権限の移譲は難しい場合が多いので、できるだけ早めに制作会社と同等の権利を保持しておく必要があります。
ぶっちゃけて申しますと、制作会社と契約を交わす際に、このくらいの防御ができる方は、そもそもウェブサイト制作に詳しいか、以前に似たようなトラブルに遭って賢くなった方のいずれかです。
なので、お金は払うので面倒なことは全部、制作会社さんにお任せしたいという方だと、出会った会社が良い会社か悪い会社かで、勝負は決まってしまっています。

たとえば、こんな方法で予防も

制作会社を通して、ウェブサイトの制作をさせるなら・・・
最終的なアドバイスは、 以下のいずれかの手順を使って、制作会社と関わるようにしてください。
あなたが絶大な信頼を寄せる方から、ご紹介を受けて制作会社を選定する。
できれば、その信頼を寄せる方自身も、その制作会社でウェブサイトなどをお願いしている実績があると更にグットです。事業をされている方で、その地域団体・同業者団体などで、贔屓にしている制作会社がある場合には、そこの評判を伺いながらご紹介頂くというのも良いでしょう。
間違っても、ネット検索で安い会社を検索して、そこに発注するということだけは避けてください。 かなりの確率で罠にはまりに行くようなものです。

ウェブサイトやパソコンに詳しい方に契約前の同席を求める。
制作会社とは、契約前に打ち合わせを設ける場合がほとんどですが、その打ち合わせに同席してもらったり、打ち合わせで頂いた資料などを、あなたの信頼している詳しい方に査読してもらって確認や質問をしてもらう、というのも手です。
当店でも、そのような資料を査読して問題点などがないかチェックする 有料サービスを実施しています。 頼れる方がいらっしゃらない場合は、当店をアドバイザーとしてご活用ください。

制作会社を通さない方法も

ある程度あなたが頑張らないといけない方法でもありますが、昔と比べてかなり簡単にウェブサイトの構築・作成ができる環境があります。主な名称を挙げておきますので、興味があれば検索してみてください。
これらは、自分自身で直接作業をすることが前提で、これらのサービスを使って制作会社に依頼しても、そこそこの費用がかかるのでお勧めしません。(ただし、制作完了後の自社のサポートコストを意識する目的で、これらを組み合わせて発注することは十分にあり得るものです。)

比較的簡単にというキーワードのもと、色々な特徴があります。
wix.com – ワープロのようにウェブサイトを構築できます。無料プランも、有料プランもあり、気に入れば本格的な運用も可能です。
JIMDO – こちらもパーツを配置する簡単な方法でウェブサイトが作成できます。独自ドメインで公開する場合には、有料プランへの加入が必要ですが、ドメイン名にこだわりが無ければ無料プランでも十分です。
stores.jp – 商品の販売を前提にウェブサイトを作成したいという方には、こちらもお勧め。ページの制作も簡単で、バスケット・決済機能は標準で装備し、月々の手数料はなし。売上に対してのみパーセントで販売手数料が発生します。扱う種類が少ない方、売上自体が多くない方、これから始めてみたいけれど販売用のウェブサイトは難しくて作れない、そんな方のトライアル利用にもお勧めです。

こんな誘惑にも気をつけて

最も多いのが『SEO対策』と称した勧誘です。 これにまつわる個別の相談事例も多く、当店でも警戒している内容のひとつです。
私どものお店では、これらの過剰なSEO対策のことを『にんにく注射』や、『ドーピング』と言い換えて説明しています。
※ 玉石混交なのですべてがそういうものとは申しませんが、結構な割合で『石ころ』です。
検索順位などに優位な効果を発揮させること全般を指します。提案された内容が『にんにく注射』的であったならば、効果は一時的で定期的にSEO対策のコストを負担しないといけません。
また、提案された内容が『ドーピング』的であったならば、その方法がルール違反と検索エンジン側で判定された瞬間に、検索順位などを下げたり、検索の候補から外されたりペナルティーが発生します。
また、SEO対策に効果があると商談を持ってくる事例に、特定のウェブサイト上にある広告枠を販売する商売もあります。SEO対策に効果があると勧められますが、広告を出すことによる露出の効果なので、一般的なウェブ広告に対する費用対効果を検討された上でご判断ください。
同じSEOという言葉でも、ウェブサイトを構築する際にSEOを意識しながら作成するというニュアンスで使われる場合は、それは検索エンジンとの正しい向き合い方を指す意味なので、危険な要素はありません。SEOはマナーであり気配りです。
検索順位は一朝一夕では上下しません。日々の更新とメンテナンスだけが唯一・確実な方法です。
『にんにく注射』や、『ドーピング』にはくれぐれもお気をつけください。


ここに記載した情報には誤りがない様努めておりますが、万が一情報に誤りがあった場合にはご容赦ください。ここの情報を利用する際はお客様の責任において利用してください。利用されたことによって生じるいかなる不利益も、当方では責任を負いかねます。