Apple製品 (Apple ID)を相続する方法。手続きの起点と最初のアドバイス
Apple社に限らず、デジタルな情報や権利を継承するのが難しい
長くこのような事業をしていると、定期的にご相談を頂くカテゴリーがあります。
それは『相続』に関するご相談です。物理的な財産を相続するのと異なり、デジタルなデータや権利を継承するのはかなり手間のかかる大仕事です。また時間との勝負という側面を持ち合わせています。
当店で回答した情報で、皆様にお役に立ちそうな情報をできる限りまとめておきます。
ご来店が可能な方は、店頭でもご相談をお受けすることも可能です。
Apple製品の相続や、各種ロック解除・パスワード解除について
一般的に故人が所有されていたデジタル機器(iPhone/iPad/Macbookなど)の【データ】や【権利】に関するものの継承については難しい課題があります。一般的に【データ】の開示や、【権利】の継承などに対して、故人の意志が尊重されますが、昨今このような意志表示が行われ、記録として残されている事例は少なく対応するIT企業によっても対応はさまざまなようです。中でもApple社は故人の意志を尊重する立場を明確にしており、どちらかと言うと『継承には消極的な』印象があります。手続きの方法が無い訳ではないので、じっくり証拠・書類を整えて対応する必要があることを事前にお伝えしておきます。
ここに記載した情報には誤りがない様努めておりますが、万が一情報に誤りがあった場合にはご容赦ください。ここの情報を利用する際はお客様の責任において利用してください。利用されたことによって生じるいかなる不利益も、当方では責任を負いかねます。
絶対にやってはダメなこと
我流で色々な作業をしがちですが、やり方と手順が違うと、最悪な結果になります。
迷ったら『故人が使っていた痕跡を残す』よう配慮してください。
✅ パスコードをかたっぱしから入力すること
iPhone/iPadのロックを解除するため、パスコードを適当に入力して解除を試みようとしがちですが、これは悪手です。パスワードの入力機会は回数制限があり、制限に達すると完全に動かなくなります。 Apple社と交渉をする上でも不利になりますので、絶対にお止め下さい。
✅ 解約をすること
故人が使っていた電話番号/SMS が今後の手続きで必要になる場合が多いです。故人が使っていた電話番号(通信事業者)の解約は少し待った方がいいかもしれません。自宅で使っていたインターネット回線(プロバイダ)も同じ理由から、解約を待った方がいいかもしれません。(プロバイダから貸与されているメールアドレスが利用されている場合があるため)
✅ 初期化すること
iPhone/iPadは初期化の手続きを踏めば、『まっさらな新品のように』使い始められるのですが、故人が利用していた形跡はもちろん、機器内部に保存していた【データ】も消えます。故人の履歴が亡くなると、【権利】継承のためのApple社との交渉にも悪影響があるかもしれません、絶対にお止め下さい。初期化をしたい場合は、以下に述べる【データ】と【権利】の継承手続きが完了してからにしてください。
✅ クレジットカードを解約すること
故人のカード(決済)を解約するのは手続きが終わるまで少し待った方がいいかもしれません。iPhone/iPadの月々の支払いがカードで行われている場合、これが自動解約になり電話番号/SMSが使えなくなりますし、故人宅のインターネット環境(プロバイダーから貸与されているメールアドレス)が解約されることがあるためです。
目次
相続する対象が何なのか?を確定させること
Apple製品の場合、相続するものが【物】なのか【データ】なのか、(ログインする)【権利】なのかを見極める必要があります。複雑な事柄ですが大事なことなので、まず最初に確実に検討してください。
【物】iPhone/iPad/Macbook 本体。
【データ】中に保存されているデータなど。
【権利】iCloud内データや、ID/パスワードで保護された領域へのアクセス権。
故人のApple IDとパスワードが判りますか?
ここに書かれているさまざまな作業には、故人が使っていた Apple IDとパスワードが必要です。もしこの記録が残っているなら、以下に記した相続の作業はかなりはかどります。法律上の相続の手続きさえ踏めば問題なく作業が行えます。あとは技術的にデータノバックアップを行えば完了となります。ここでは、このApple IDが不明で、何もできないという方を想定して記事が作成されています。
相続の対象が【物】である場合
iPhoneやiPadなど、相続の対象が【物だけ】であり、中に保存されている【データ】や、クラウドなどに保存されている情報への【権利】は該当しない、もしくは故人の意志により【データ】や【権利】の継承が許可されていない場合は、【物】の継承(相続)のみが行えます。
機器内のデータは全て消えますが、それぞれの機器として初期化して再利用することは可能です。
購入した通信事業者の店舗(サービスカウンター)か、Apple Storeのジーニアスバーや、修理サービスプロバイダーの店舗にて対応して頂けます。(詳細は事前にApple Supportにお問い合わせください。)
相続の対象が【データ】である場合
故人が残した【データ】を相続したい場合、その【データ】がどこに残っているか?が重要な情報になります。
iCloudサービスを使用している可能性がある場合は、
(1) iPhone/iPadなどの機器内部。
(2) iTunesが動作していた、パソコンの中 (iTunesデータ格納領域)
(3) iCloudサービス上の領域。
どこにデータを格納されていたのか、継承される方が情報収集をする必要があります。
相続の対象が【権利】である場合
【権利】を継承(相続)する必要がある場合の多くは、iCloud 関連だと思います。
サービス利用者本人を特定するのは、Apple IDとパスワードの組み合わせが必要です。
この権利の継承作業には、Appleサポートの関与が不可欠です。すべての事例において継承作業のリクエストが通るとは聞いておりませんが、過去の事例では継承のリクエストが通って、Apple IDの継承ができたという事例があります。詳細はAppleサポートの対応が始まったときに判ると思いますが、当方で把握しているのは以下のような情報です。
・継承の対象となるデバイスとApple ID名称、故人の氏名などの個人情報
・所有者されていた方が亡くなられたという証明書類
・申請されたあなたが相続対象者であること、近親者であることの証明書類
・(今回の申請が)相続に関わる方の総意であることの証明書類(委任状などが該当)
Apple社が対応する、相続・継承のレパートリー
当店で関わった事例の中で、Apple社が提供してきた選択肢について。
(a) 当該アカウントの使用停止手続き
(b) 当該アカウイトの削除手続き
(c) 当該アカウントを【権利】として相続者に継承させる手続き
先にも記したように、Apple社は故人の権利を尊重するスタンツなので、【データ】へのアクセスを無効にする、【権利】を消失させる手続きについては簡単に話しが進みますが、(c) の権利継承については色々な手続きや条件があります。お手伝いした我々が受けた印象では、相続される方の熱意で決まるような気がしています。具体的に熱意って何と問われると答えにくいですが、そういう印象です。
手続きを成功させるために必要なこと
利用されていたであろうメールアドレスの情報や、アカウント名と思われる情報、そのアカウントを特定するために必要であろう故人に関する情報をできるだけ多く揃えて交渉に望むことが重要です。何も情報がなく、iPhone本体を持ち込んで頼み込んだとしても、【権利】の継承手続きについては、Apple社で対応してもらえないと思います。
参考リンク
Apple社が公表している手続きについて、リンクを貼っておきます。
LinkApple:死亡した家族の Apple アカウントへのアクセスをリクエストする方法